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8月, 2018の投稿を表示しています

お姉様は

「私たちは愛されなきゃいけないの。」 裸のまま、布団の中で体を絡み合わせ、私たちは秘密の言葉を交わした。 「誰に愛されればいいのかしら。」 顔も声もそっくりな私たちの間に、言葉の壁は存在しなかった。 「それが問題ね。」 お姉様の呼吸と私の呼吸が混ざり合う。 もう、本当は、どちらが話しているのかも分からなかった。 「私たちを愛してくれる人なんているのかな。」 胸が苦しい。 「私たちを見てくれる人なんているのかな。」 体が重い。 「私たちが生きてる意味はあるのかな。」 意識が遠くなる。 夜空の中に落ちていく。 まばゆい無数の青の宝石の中に、私は包まれていった。 目が覚めると、私は一人だった。 優しいお姉様はどこにもいないで、 ただ苦しい現実が私を待っていた。 朝日は窓から差し込み、 冷たい空気が風に運ばれてカーテンを揺らしていた。 私は泣いた。 ずっと泣いた。 そうすることで、なにかから許されようとするように。 「誰に愛されればいいんだろう。」 そう呟いたのは、やっぱり私だった。

お姉様と

「ねえお姉様、  私にはきっと、人の心がないんだわ。」 私はお姉様の顔を見つめていました。 お姉様は仰向けになって目を閉じています。 こうして毎夜一緒に寝るのが私たちの習慣でした。 「どうして、サト?」 「だって、ペットの小鳥が死んだのに、  ちっとも悲しくないんだもの。  それよりも、部屋の掃除とか、明日の用事のことばかり  考えてしまうの。」 「そうなんだ。」 お姉様の顔は、冷たく整っていて、とても奇麗です。 私はお姉様の頬に手を寄せました。 「慰めてくれないの?」 「何を慰めるの?  私たちに人の心が必要?」 ああ、お姉様。 その繊細な喉を震わせる音の一つ一つが、私の胸の中で響きます。 「ええ、そうでした……人の心なんて必要ないものでした。」 「サト……サトの手は冷たいね。気持ちいい。」 お姉様は笑って、私の手を包んでくれました。 その手は柔らかく、温かく、いい香りがしました。 お姉様。人の心は、私たちが生きていくのに必要ないものですけれど。 貴女と繋がれないのなら、生きていることに何の意味があるのですか。