ずっと二人で一緒に暮らしたい。
この広い宇宙の下で。
無数に輝く星の下で。
月の兎はもう私達二人だけ。
みんな塵になる病気にかかって。
きっと、あの。
青い星から来た蜘蛛がよくなかったんだ。
「水をくみにいこう」
お姉ちゃんが話しかける。
私たちは双子で、
生まれた時からずっと一緒。
ごはんも、ふくも、ねるときも一緒。
だから、ありえないんだ。
どっちか一人が死ぬなんて。
「うん」
生きる場所も、死ぬ場所も。
私たちは同じじゃなきゃいけない。
🌕
「今日もなにも無いね」
塵になったのは兎だけじゃなくて、
私たち兎が作り上げてきたもの、
その全ては跡形もなく消えた。
月にはもうなにもない。
だけど、困ることもない。
私たちは水さえあれば生きていける。
頭上には青く輝く惑星。
それは静かで、
でもどうしてだろう、
見るたびに、こんなに胸騒ぎがする。
「なにも無くてよかったよね」
ときどき、
お姉ちゃんか、私か、
どちらが話しているのかわからなくなる。
私の思っていることは
ぜんぶ、お姉ちゃんも思っていることだった。
「明日もなにも無いといいな」
静かの海へ続く
足跡だけが深くなっていく。
🌖
お姉ちゃんと手をつないで眠りにつく。
この時間がいちばん好き。
あらゆる感情はもう、
私たちには不要なものだった。
今はただ、穏やかに
永遠に妨げられることのない時間と共にいる。
「いつ終わるんだろう」
急に胸が苦しくなる。
あの言葉は
誰のものだっただろう。
星たちがゆっくりと巡っていく。
だけど本当は
動いているのは私たちの方だ。
🌗
「幸せになるにはどうしたらいいんだろう」
お姉ちゃんが言った。
お姉ちゃんは幸せじゃなかったの?
私がずっとそばにいたのに。
私はお姉ちゃんがいるだけで幸せだったのに。
「あの青い星には何があるんだろう」
お姉ちゃん。
何を見てるの?
「私は何のために生きてるんだろう」
お姉ちゃん。
そんな顔をしないで。
いつもの優しい顔で
私の手を握ってよ。
🌘
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