海の底へ帰るまで
ほんの少しだけ
手を繋いでいられる
だからこんなに寂しい
こんなにも
あたたかい日だ
つばめも
飛んでいるだろう
なんでもなくなっていくのだ
悲しみも希望も
なんでもなくなって
薄れて消えていく
花の香りのように
私の感触も
ゆっくり消えていけばいい
もっともっと真っ直ぐに
落ちていけたらいいのに
今日は昨日より
少し澄んでいる
音のない場所に
近づいているから
世界でいちばんみじかい詩を
残して貴方は去っていった
いつか終わる
苦しみも悲しみも
夢も希望も
いまにだって
消えてしまえる
きれいな羽で
空を飛ぶ日が来る
白い空だけが
私を呼んでくれる
張りつめた鮮やかなトマト
その皮を箸で突き刺して
遊んでいる子供
みんな私を
ここまで連れてきてくれて
ありがとう
もう行くね
あの空の向こうに
水晶の森があるって
むかし言ったこと
まだ覚えてるかな
忘れても
ずっとそこにあるんだよ
大好きだったけど
氷の雨が降ってきたから
もう行かなくちゃ
雲はすぐ晴れるよ
メロンの甘さ
桃の香り
クリームの白さ
そんなものいらないから
透明でいさせて
人形に心はなくて
故人は喋らなくて
神様はいない
けど
私の中には友達がいる
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