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知らない人

正月に帰省して久々に実家の犬に会ったんですが
どうやら自分のことを忘れているらしく
やたら吠えられる割に撫でてやるとおとなしくなるので
なんなんだろうと思いました





知らない人が家にやって来た。
いるのかいないのかわからないような人が。
私の家族に混じって我が物顔で生活している。
あの人は誰。
どうして誰も気付かないの。
私はあの人が嫌い。


ねえ。
どうしてそんなに私のことを見つめるの。
なんなの。
そんなところでぼーっとしていないで
もっとこっちへ来なさいよ。


こいつの手はなんだか変なにおいがする。
その自信なげな触り方とか、
手持ち無沙汰な感じの立ち方とか。
癇に障る喋り声とか、
直視できないほど醜い姿態とか。
なにもかも変な奴。


私は何度もあいつを呼んだ。
嫌いだから。
目に入るだけで不快だから。
だから、呼ぶの。
この気持ちを打ち消すように。


相変わらずの弱々しい手付きで私を撫でた後、
そいつは手を離してしばらくそこに立っていた。
出逢った頃のように遠くから私を見るような目で。
下手な作り笑いをして手を振った。
その意味を私は知らなかった。


何事もなかったかのようにいつもの日常が戻ってきた。
少ない家族たちと過ごす、ささやかな日常。
ご飯を食べて、遊んで、散歩して、眠るだけの生活。
いまさらあいつに何の感情もないけれど、
額に残った変な匂いを思い出して、
少し広がった世界のことを考える日もあるの。
窓から差し込む陽だまりの中で。

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