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昔の62

アスカもキノもずっといます




何かが始まる予感がした。
私の中で、何かが動き出す。
得体の知れない黒い塊。
黒は紫になって赤になって黄になって白になった。
動き出す。逃げ出す。ここから。
さあ、私と一緒にここから逃げ出そう。


「ホームページ?」
アスカは素っ頓狂な声を出した。
「そう。私のホームページを作ったの。」
私はにっこりと笑った。
「はあ……それで、何をするの?」
「小説を書こうと思うの。」
「ふーん……」
アスカはいじっていた機械から離れ、私の方にやってきた。
そして私をじっと見つめる。
「それで、何かが変わると思ってるの?」
ああ、さすがだ。
一瞬で、私の奥底まで見通してしまう。
でも、負けるわけにはいかない。
アスカにではなく、私にだ。
私は、私から逃げ出すと決めたのだから。
「変わるよ。私は変わる。」
「どうして?」
「やっぱり、外からの刺激って大事だと思うし、人に公開するから出来る成長ってものがあると思うし、なにより、私自身が変わろうとしてるんだし……」
「本当に?」
「え……」
「本当に変わろうとしてる?」
「……」
重い。
アスカの言葉が、重い。空気が、重い。心が、重い。
一体いつから、私の身体はこんなにも重くなってしまったのだろう。
「動かなければ体は鈍る。流れの止まった水は濁る。」
大聖堂の扉が開いた。
黄白い光を背負って立っていたのは、キノだった。
「心も同じだ。使わなければ機能はどんどん衰える。
 このままだとお前は、死んだ心のまま生き続けることになる。」
「じゃあどうしたらいいの!?」
「考えるんだ。ずっと先まで考えて、一番良い選択をするんだ。
 大事なのは、先を見ることだ。」
「今すべきことなんて、きっともう分かってるよ。」
アスカは悲しそうだった。

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