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昔の52

光芒




遠い遠い仮想の幻想の彼方に見えた懐かしい城は
消えるべくして生まれた紫の微細なもやのように
儚く軽く薄く孤独な堆積物の上にあるようでいて
だがこの鈍く濁った空から零れる宝玉の様な雫は
この地に照射する全ての根源を分解し拡散させて
それは確かにあの地にも照射し吸収されていると
光を奪われた私の元にある古来からの親類が告げ
奇怪な形状の特質水蒸気が非特質水蒸気に変化し
希望を背に四十一度の上空に無限色の橋が架かり
低空飛行の鳥々が上昇気流に乗って見えなくなる
その時黒ずみ朽ち果て遥か意識の果てを彷徨って
失われかけていたそれは突然燦然と眩く輝き出し
焼却炉は渦に飲み込まれ寝台は深海の奥底で眠り
奇譚は遂に開幕の時を迎えたのだった。

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