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昔の107

中心へ向かいます




私にとっては初めての変化だった。
確かに、人は変わるものだ。
世の中のほとんどの物語は「変わり」の物語だ。
変わることはすなわち成長することだ。
だから私達は変わらなければならない。
それは分かっていたはずなのだけど、
でもどこかで私だけは変わらないものだと思っていた。

水晶の雫が腕に落ちた。
腕を貫くような透き通った冷たさを感じる。
不思議と痛くはない。ただ冷たい。
うっすら瑠璃色がかった大きな結晶が無数に並んでいる。
私の背丈程はある、岩のような結晶。
それはソーダ水のように透き通って、触れるとひんやり冷たい。
そして天井からも氷柱のように垂れる結晶がどこまでも続く。
ここは水晶の洞窟だ。

「遠くから見てる時は分からなかったでしょ?
こんな綺麗な洞窟になってたんだよ~
ほら、あの中心の光が水晶で屈折して、屈折して、何度も曲がってるうちに
七色に分かれて、それで遠くから見ると虹色に見えてたんだよ」

あなたは楽しそうに話す。
私はただ無言であなたについていく。
もう正面は眩しくて直視できない。
かといって周りも水晶がプリズムの役割をするおかげで光が交錯を重ね、
もう青か紫かも分からない。
私はずっと下を向いて、母親についていく子供のようにただ歩いた。

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