魔法少女
魔法少女、ってご存じですか?
ほら、最近アニメとかでよくやってる。
不思議な力で敵をやっつける女の子です。
かっこいいですよね。
私も昔は憧れたものです。
変身ポーズを真似したり、魔法の杖を買ってもらったり。
それがどうしたの、ですか?
実は私、魔法少女の友達なんです。
「なんでわたしがこんなダサいことやらなきゃいけないのよ」
セリちゃんは腕を組んで大威張りで言いました。
「だってセリちゃんにしかできないんだから」
「だからなんでわたしなのよ、あーあ早く帰ってケーキ食べたい」
「あ、あのさセリちゃん……」
私はポシェットからラッピングした小包を取り出しました。
「頑張ったらお腹が空くだろうと思って、これ作ってきたんだ」
「な、なによ、そんな気を遣わなくていいのにっ……///」
セリちゃんは少し顔を赤らめながら包みを開けました。
「もうっ、さーさったら真面目すぎるんだから……///
どんだけわたしのことが好きなのよ……///
……は?」
セリちゃんは包みからうどんを摘み上げて不思議そうにしました。
「なに、これ」
「ソバだよ」
「いやうどんでしょ!?どうみたって!!!なんでうどんなの!?」
「セリちゃんうどん好きって言ってたから」
「好きだけど麺だけ持ってこられても困るよ!?
つゆは!?具は!!???」
「逆に訊くけど、つゆを持ってたらこの場で食べたの?」
「食べないけど!!!なんでそんな偉そうなの!?」
「せっかく作ってきてあげたのに……」
「べっ、べつに感謝してないわけじゃないんだからね!!!」
そんな戯れを楽しみながら私達は夜の道を帰りました。
セリちゃんはこんな子です。
「神さま神さま、どうか私の願いを聞いてください」
「よかろう。なんでも聞いてやるぞよ」
「私も魔法少女になりたいです」
「それは無理じゃな」
「どうしてですか」
「DNAの塩基配列が特定のパターンでないとなれないのじゃ」
「そんな、不公平です」
「不公平じゃ、不公平じゃ。
じゃが、どうして公平でないといけない?
どうして公平だと思ったのじゃ?
自然はいつだって不公平なものじゃろう」
「それは」
「それは、そう、人間だけが公平だからじゃ」
「私達だけが、公平」
「人間だけが、皆に平等であろうとするからじゃ
人間だけが、偏りを、歪みを、間違いを、正そうとするからじゃ。
人間だけが、自然の法則に逆らえるのじゃ。
エントロピーを減少させる事ができるのじゃ」
「セリちゃん、何を言ってるの?」
「べっ、べつに、理科の先生の受け売りなんだからねっ!!!」
セリちゃんはこういう子です。
この世には、たくさんの魔法少女がいます。
人を明るくする魔法少女がいます。
便利な道具を作る魔法少女がいます。
素敵な絵を描く魔法少女がいます。
自由な音楽を奏でる魔法少女がいます。
深遠な哲学を考え続ける魔法少女がいます。
恋を紡ぐ魔法少女がいます。
そして、もっとたくさんの、何の取り柄もない少女がいます。
何もしない少女がいます。美しくも、興味深くもない少女がいます。
私達は、かつて魔法少女に憧れた少女でした。
だけど、魔法が解けてしまった少女でした。
私は、セリちゃんのそばにいます。
セリちゃんの強がりを知っています。
セリちゃんが本当は誰より大変なことを、
誰より真面目なことを、知っています。
セリちゃんが素直じゃないことを知っています。
その歪みが、嘘が、苦しみが、セリちゃんの魔法なんだってことを。
外の歪みを、全部自分の中に引き受けていることを。
だから、セリちゃんは、いつもあんなに平気そうで。
本当は、いつも壊れる寸前のくせに。
魔法少女は、そういう子達です。
魔法少女、ってご存じですか?
ほら、最近アニメとかでよくやってる。
不思議な力で敵をやっつける女の子です。
かっこいいですよね。
私も昔は憧れたものです。
変身ポーズを真似したり、魔法の杖を買ってもらったり。
それがどうしたの、ですか?
実は私、魔法少女の友達なんです。
「なんでわたしがこんなダサいことやらなきゃいけないのよ」
セリちゃんは腕を組んで大威張りで言いました。
「だってセリちゃんにしかできないんだから」
「だからなんでわたしなのよ、あーあ早く帰ってケーキ食べたい」
「あ、あのさセリちゃん……」
私はポシェットからラッピングした小包を取り出しました。
「頑張ったらお腹が空くだろうと思って、これ作ってきたんだ」
「な、なによ、そんな気を遣わなくていいのにっ……///」
セリちゃんは少し顔を赤らめながら包みを開けました。
「もうっ、さーさったら真面目すぎるんだから……///
どんだけわたしのことが好きなのよ……///
……は?」
セリちゃんは包みからうどんを摘み上げて不思議そうにしました。
「なに、これ」
「ソバだよ」
「いやうどんでしょ!?どうみたって!!!なんでうどんなの!?」
「セリちゃんうどん好きって言ってたから」
「好きだけど麺だけ持ってこられても困るよ!?
つゆは!?具は!!???」
「逆に訊くけど、つゆを持ってたらこの場で食べたの?」
「食べないけど!!!なんでそんな偉そうなの!?」
「せっかく作ってきてあげたのに……」
「べっ、べつに感謝してないわけじゃないんだからね!!!」
そんな戯れを楽しみながら私達は夜の道を帰りました。
セリちゃんはこんな子です。
「神さま神さま、どうか私の願いを聞いてください」
「よかろう。なんでも聞いてやるぞよ」
「私も魔法少女になりたいです」
「それは無理じゃな」
「どうしてですか」
「DNAの塩基配列が特定のパターンでないとなれないのじゃ」
「そんな、不公平です」
「不公平じゃ、不公平じゃ。
じゃが、どうして公平でないといけない?
どうして公平だと思ったのじゃ?
自然はいつだって不公平なものじゃろう」
「それは」
「それは、そう、人間だけが公平だからじゃ」
「私達だけが、公平」
「人間だけが、皆に平等であろうとするからじゃ
人間だけが、偏りを、歪みを、間違いを、正そうとするからじゃ。
人間だけが、自然の法則に逆らえるのじゃ。
エントロピーを減少させる事ができるのじゃ」
「セリちゃん、何を言ってるの?」
「べっ、べつに、理科の先生の受け売りなんだからねっ!!!」
セリちゃんはこういう子です。
この世には、たくさんの魔法少女がいます。
人を明るくする魔法少女がいます。
便利な道具を作る魔法少女がいます。
素敵な絵を描く魔法少女がいます。
自由な音楽を奏でる魔法少女がいます。
深遠な哲学を考え続ける魔法少女がいます。
恋を紡ぐ魔法少女がいます。
そして、もっとたくさんの、何の取り柄もない少女がいます。
何もしない少女がいます。美しくも、興味深くもない少女がいます。
私達は、かつて魔法少女に憧れた少女でした。
だけど、魔法が解けてしまった少女でした。
私は、セリちゃんのそばにいます。
セリちゃんの強がりを知っています。
セリちゃんが本当は誰より大変なことを、
誰より真面目なことを、知っています。
セリちゃんが素直じゃないことを知っています。
その歪みが、嘘が、苦しみが、セリちゃんの魔法なんだってことを。
外の歪みを、全部自分の中に引き受けていることを。
だから、セリちゃんは、いつもあんなに平気そうで。
本当は、いつも壊れる寸前のくせに。
魔法少女は、そういう子達です。
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