こういうノリ久しぶりに来たね
「難しく考え過ぎなんだよ、もっと気楽に構えればいいの。」
「じゃああんたがやって見せてよ」
「いいよ。このぐらいどってことないんだから」
高野山の頂上にあるバッティングセンター。
国土地理院の陰謀によって地図には載っていない。
だからここは、知る人ぞ知る絶好の穴場なのだ。
空気が薄いので球がよく飛ぶと評判である。
周囲にネットもないので、思い切り打てばさぞ爽快な打球となるだろう。
打てれば、の話だ。
「ほらいくよー、よく見てなよ―」
「見てるからよそ見しないでちゃんと打ってよ」
「分かってるって」
きっと奴のことだ、苦もなく打ってしまうのだろう。
常に、およそありうる限りの最善の結果を出す。
それが奴の決まったやり方だった。
あるいはこれまでの結果は全て偶然だったのかもしれない。
だとしても彼女の運を引き寄せる力を実証しているだけなのだが。
結果を確信してはいても、それでも尚何処かに期待してしまう。
そして球が撃ちだされた瞬間、目を閉じて――
遠く高らかに響いたバットの音が耳に届くよりも先に、私は気を失った。
「難しく考え過ぎなんだよ、もっと気楽に構えればいいの。」
「じゃああんたがやって見せてよ」
「いいよ。このぐらいどってことないんだから」
高野山の頂上にあるバッティングセンター。
国土地理院の陰謀によって地図には載っていない。
だからここは、知る人ぞ知る絶好の穴場なのだ。
空気が薄いので球がよく飛ぶと評判である。
周囲にネットもないので、思い切り打てばさぞ爽快な打球となるだろう。
打てれば、の話だ。
「ほらいくよー、よく見てなよ―」
「見てるからよそ見しないでちゃんと打ってよ」
「分かってるって」
きっと奴のことだ、苦もなく打ってしまうのだろう。
常に、およそありうる限りの最善の結果を出す。
それが奴の決まったやり方だった。
あるいはこれまでの結果は全て偶然だったのかもしれない。
だとしても彼女の運を引き寄せる力を実証しているだけなのだが。
結果を確信してはいても、それでも尚何処かに期待してしまう。
そして球が撃ちだされた瞬間、目を閉じて――
遠く高らかに響いたバットの音が耳に届くよりも先に、私は気を失った。
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