山に登っても
「そこから何が見える?」
何が見える?
それはそれは平凡な景色だった。
誰もが見たり聞いたりしたことのあるような、つまらない物々の集合体だった。
ガラスの破片、鉄の棒切れ、小石、コンクリートの舗装路。
こんなにもつまらないものだったなんて。
遠くへ行けば、高くへ登れば、きっと素晴らしい景色が見られるのだと信じていた。
見たこともないような世界が僕を迎えてくれるのだと思っていた。
幻想は無残に砕かれ、代わりに残ったのは一欠片の希望もない現実だった。
世界がこんなにもつまらないものだったなんて。
今まさにこの山を登らんとしている彼に、一体何と言えば良いだろう。
「ダメだったんだ。やっぱりダメだったんだよ。
いくら遠くから見たって、どれだけ高くから見たって、やっぱり近くで見るのと変わらないよ。
どこを探したって、つまらないものばかりだ。
灰色の、冷たい、汚いものばかりだ。
もう登るのは止めにしよう。
僕は、ずっと大事にしていた最後の瑠璃まで失ってしまった。
君までそれを失うことはない。」
しかし、その言葉は彼に届かなかった。
ああ、もう彼は、僕と同じ山には登っていなかった。
もっともっと高い、もっともっと遠い場所へ行こうとしていたのだ。
気付けばもう、誰も僕のそばにはいない。
みんな黙って、気が触れたように、一心不乱に坂を登っている。
僕の声はもう誰にも届かない。
ダメなんだ。無駄なんだよ。
何をしたって灰色は灰色のままで、冷たい街は冷たいままだ。
でも君たちはまだ気付かないで登り続けるんだね。
頂上に着くまで。大事な物を失うまで。
まあ、それもいいだろう。
「そこから何が見える?」
何が見える?
それはそれは平凡な景色だった。
誰もが見たり聞いたりしたことのあるような、つまらない物々の集合体だった。
ガラスの破片、鉄の棒切れ、小石、コンクリートの舗装路。
こんなにもつまらないものだったなんて。
遠くへ行けば、高くへ登れば、きっと素晴らしい景色が見られるのだと信じていた。
見たこともないような世界が僕を迎えてくれるのだと思っていた。
幻想は無残に砕かれ、代わりに残ったのは一欠片の希望もない現実だった。
世界がこんなにもつまらないものだったなんて。
今まさにこの山を登らんとしている彼に、一体何と言えば良いだろう。
「ダメだったんだ。やっぱりダメだったんだよ。
いくら遠くから見たって、どれだけ高くから見たって、やっぱり近くで見るのと変わらないよ。
どこを探したって、つまらないものばかりだ。
灰色の、冷たい、汚いものばかりだ。
もう登るのは止めにしよう。
僕は、ずっと大事にしていた最後の瑠璃まで失ってしまった。
君までそれを失うことはない。」
しかし、その言葉は彼に届かなかった。
ああ、もう彼は、僕と同じ山には登っていなかった。
もっともっと高い、もっともっと遠い場所へ行こうとしていたのだ。
気付けばもう、誰も僕のそばにはいない。
みんな黙って、気が触れたように、一心不乱に坂を登っている。
僕の声はもう誰にも届かない。
ダメなんだ。無駄なんだよ。
何をしたって灰色は灰色のままで、冷たい街は冷たいままだ。
でも君たちはまだ気付かないで登り続けるんだね。
頂上に着くまで。大事な物を失うまで。
まあ、それもいいだろう。
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