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昔の70

同じである方が不思議




長い長い物語の一部。


「一年前、君はこう言った。
 『占いなんて、信じるわけないじゃない。』
 それなのに、どうして……」
「一年も経てば、人は変わるものよ。」
「そうだね。
 あの時の君と今の君は、もはや別人だ。
 いつ別人になった?」



「はじめまして。
        昨日の私。」
「こんにちは。
        明日の私。」
「わたしはもう死んでしまう。
誰にも悲しまれずに。
自分にすら気付かれずに。」
「わたしはもう生まれてしまう。
だれにも祝福されずに。
自分にすら気付かれずに。」
「今日見た桜は綺麗だったよ。」
「もう散ってしまったのね?」
「そう。でも君は散った桜が見られるんだ。」
「明日の私は、何を見るのかしら。」



「君は本当にずっと君だったのか?」
「そうだ。」
「ひょっとしたら君は、一分前に生まれたばかりかもしれない。
 記憶なんて当てにはならない。
 簡単に改竄できるんだ。」
「ただの記憶じゃないんだ。
 うまく表現できる言葉が無いんだけど、
 僕は確かに昨日を生きていたんだ。 
 確証があるんだ。
 ただの記憶とは違う……
 間違いなく体験したと確信できる記憶なんだ。
 やっぱり、うまく表現できないけど……」
「いや、それでも君は別人さ。
 意識すら、彼らは持ち越せるんだ。」

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