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昔の158

無数の友達




選ばれなかった生を、存在しなかった子供を、
誰もが愛している。
未練は力を削ぎ、未来を殺し、
たくさんの子供達がまた、闇に引き込まれる。

落ちて行く。
どこまで行けるか確かめるように、
確かな地面を求めるように、
私は落ちて行く。
気付いた時にはもう、這い上がれなくなっていた。
上がり方も、上がるべき場所も、もう忘れてしまった。

私は何者でもないけど、
何者かである前に私だから、
私なのに、何者かにならなくちゃいけないから、
だから、私は逃げたんだ。
そして今も、
私は何でもないままだ。

きれいな夏の空気が、
言葉にならないくらい穏やかな時間が、
頭の中だけにはある。
現実がよほどチープに見えるくらいの、
その恐ろしい新鮮さが、
もうどちらが現実でどちらが夢か、
私に分からなくさせる。

一瞬の中に永遠があり、一つの中に全てがある。
そんな夢の文法の中では、一滴の水にたくさんの選ばれなかった生が宿る。
だから私達にはたくさんの友達が、
今もまだ、友達のままで居る。

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