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昔の4

ちゃんとしたお話を書こうとした。



ひどい雨だ。
空は一面真っ黒い雲で覆われている。
おかげで、今は昼だと言うのにまるで夜の様な暗さだ。
電気をつけないと、まともに本も読めない。

こんな雨だというのに、キノはどこかへ出かけている。
どこへ行くのか聞いても、はぐらかして教えてくれなかった。
明らかに怪しいけど、私は実はそんなにたいしたことじゃないと思っている。
キノがまともに返事をしないのは、いつもの事だ。むしろ、まともに返事をしたときのほうが怪しい。

そういうわけで、今家の中は大変静かなので、私は居間で本を読んでいる。
正確に言うと、居間の床に座布団を4枚並べ、端に枕を置き、その上に寝転がって、掛け布団をかぶり、傍に電気スタンドをつけて、本を読んでいる。
こういう雨の日にこれをやると、なぜだかとても幸せな気分になれる。
外は暗いし雨で寒そうなのに、自分だけは明るくて暖かい、というギャップがいいのかもしれない。

私は黙々と読書をしていたが、ふと時間が気になって、時計を見上げた。
読み始めてからもう2時間くらいたっている。
雨はますますひどくなっている。雷鳴もかすかに聞こえる。
キノはまだ帰ってこない。
私は少し寂しくなり、布団から出てキョウコをつれてきた。

キョウコというのは私手作りの人形のことだ。
姿形は私とキノの中間くらいにしてある。
かなり手間をかけて作ったので、ぱっと見は本物の人間の様に見える。
寂しくなった時、私はよくこのキョウコを連れてくるのだ。
キョウコと一緒に布団に入り、私はまた本を読み始めた。

もう本を読み終わってしまったけど、キノは、まだ帰ってこない。
時刻はもう夕方を過ぎていた。
外はほとんど真っ暗だ。相変わらず雨も降りつづいている。

どうしたんだろう・・・

これくらいの時間まで出かけていたことも多々あったとはいえ、状況が状況だけに心配になってくる。

まさか、雷に打たれたりしたんじゃ・・・
雨で足を滑らせて、階段から落ちたんじゃ・・・
川に流されたんじゃ…

考えは嫌な方向へばかり膨らんでいく。

探しに行かなきゃ!

私は外へ飛び出した。




あー、やっと帰ってこれた。
まさかちょっと散歩するつもりが、こんなに迷っちゃうなんてね。こまっちゃうね。すっごく疲れた。

あれ?電気がついてない。
もしかして・・・寝てるのかな?
アスカはこういう日はよく居間で布団に入って読書してるんだけど、30%ぐらいの確率でそのまま寝ちゃうんだよね。

・・・っと、あー、やっぱりだ。アングルポイズ・ランプの明りしかないから見えにくいけど、布団の中で寝ちゃってる。
まったくもう、おねむさんなんだからなぁ。
いつもなら問答無用で起こすんだけど、今日は寝かしておいてあげよう。
たまには優しくしてあげないとね。

・・・まあ、歩き疲れて起こす元気も無いからなんだけど。

私はアスカを起こさないよう、そっと玄関まで行き、鍵を閉めた。
そのまま寝室へ行き、私は安らかな眠りに就いた。




おわり

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