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昔の97

力のない言葉




夕暮れに一日は長すぎる。
明日はどこにもない。
日差しの距離は長すぎる。
力を得るより先に落ちていく。
それでもまだ底は見えない。

言葉に未来は遠すぎる。
かつて誓ったものの意味は分からない。
二人の距離は縮まらない。
凍えるような堂の中にいる。
何も見えない。

プロジェクタがいつか見た風景を映し出す。
河原が夕方の空気に包まれ赤とんぼが静かに行き交う。
一日がその全てだったあの頃の記憶が。
明日が来るなんて思いもしなかったあの頃の思いが。
今立ち返ってみてそれが本当だったのだと知る。
言葉が作りだした幻想から目覚めてやっと

堂の戸が開け放たれる。
眩しい光に侵されてスクリーンは見えなくなる。
自分は外へ出てきっとすぐにこのことを忘れる。
でもまたいつかここへ帰って来られるように
力のない言葉で繋ぎ止めておく

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