昔の４０

小説を書くのは好きではないです




これはわたしの中にあるものを吐き出す作業。
汚いものもきれいなものも、みんな一緒に吐き出して……
わたしは、空っぽになる。

私は森の中にいる。
小さな男の子が下を向いて泣いている。
「どうしたの？」
私は声をかける。
男の子は顔をあげ、私を見る。
「お姉ちゃん誰？」
私は優しく微笑む。
「天使よ。」
「天使？」
「そう。あなたを助けるために、地上へ舞い降りたの。」
「すごーい！」
「どうして泣いていたの？」
男の子は目を逸らす。
しかし、何か言いたそうな眼をしている。
「あ、そうだ！お姉ちゃんの家へ来る？
今日は友達を呼んでパーティを開くのよ!」
「えっ……でも……」
「どうしたの？」
「お母さんが、知らない人について言っちゃだめって。」
しつけが良くできてる子だ。
私は感心する。
「そうね、じゃあ仕方ないわ。」
「あっ……で、でも……」
男の子は手を伸ばしかけ、また引っ込める。
迷っている様子だ。
頭が逆立つ。
「キミ、名前は？」
「広瀬　爽」
「そうか。」
「お姉ちゃんは？」
「いや、私は名乗るほどのものじゃないので……」
「天子さんじゃないの？」
「そうそう、天子よ。」
私は息をつく。
頭に固いものが当たる。
これは……パンだ。
「それ僕のパンだよ。」
「あ、そうなの。」
「勝手に頭に乗せないでよ。」
ええい、めんどくさい。
私は男の子の腕をつかむ。
「ど、どうしたの、天子さん？」
「あなたは殺し屋に狙われてるの！良いからこっち来て！」
男の子の腕を引っ張り、家まで連れ込んだ。

心の奥底に溜めこまれた感情はやがて腐敗し、死臭を放つ。
どんなに美しい宝石も、いつかは朽ち果て、塵となる。
私は吐き出さねばならない。
全てを吐き出し、私は自由になる。