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昔の110

アリスシリーズはここまでです
終わり方も考えていたんですが結局書けませんでした
自分でもほんと無いなあって思います




ずっと夢を見ていた。
今もまだ夢を見ている。


いつかのガラスの欠片が宙を舞う。
日差しを浴びてしまって姿を隠せなくなった埃みたいに、
所在無さげにふわふわと漂っている。
砕かれた、かつての私の名残りだ。

あなたの足が止まった。
視界の上端に、白とも黄とも橙ともつかない色で光る、大きな壁が見える。
私達は光源らしきものの前にまでやって来たようだった。
そしてあなたは私の手を取り、壁の中へ進んでいく。
私は思わず前を向いてあなたの体を見つめた。
とても眩しいはずなのに、壁に飲まれていくあなたの姿ははっきり見えた。
壁はすこしも動かず、ただ静かにあなたを受け入れた。
あなたは遂に腕だけになって私を壁の向こうへ引っ張った。
私は意を決し、目を閉じて前へ歩みだした。
ぐにょん、という妙な感触が指の先から腕へと進み、
それから全身をスキャンするように横切っていった。

「お姉さん!連れてきたよー!」

目を開くと、そこは大聖堂を思わせるような広いドーム状の空間だった。
半径100mはあろうかという、怖いくらいに伽藍とした場所。
その中央にたった一人、あの人はぽつんと立っていた。

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我思う、故に我あり。
私の中の誰かが私に語りかける。

私は確かにここに存在している。
でも、その証明は私にしか通用しない。
どんなに言葉を尽くしても、体に触れても、
私の存在の証明にはならない。
私はずっとその方法を模索していた。
アリスちゃんと過ごした時間の殆どをそのために費やした。
それでもアリスちゃんには届かなかった。

だからもう、それは諦めて、逆にする。
あなたに私の存在を伝えるのではなく、あなたの存在を私が消す。
あなたの自我が存在しないのなら、私に自我が無くても問題ない。
あなたは私を認めざるをえないはずだ。

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「井出 愛理澄です。愛と呼んでください」

それだけ言ってあいつは席についた。
わたし達に何かを伝えようという意志は感じられない。
事務的に、言うべきことを言っただけという印象だった。
僅かな沈黙の後、まばらな拍手がぱらぱらと起こった。
その後にわたしが立って何か話したはずなのだが、全く覚えてない。
ただその不思議なクラスメートのことを考えていた。

見れば見るほど奇妙な子だった。
まず目につくのはその奇抜な服装だ。
うちの中学は珍しく私服なのだが、だからといって
ドレスを着てくる子はそうそういない。
肩を優に超えるほど長い髪には大きなリボンが付けられている。
顔はよく見えないが、休み時間にちらっと見た感じでは
恐ろしいほどの美形のようだった。
あまりに整いすぎていて、およそ現実のものとは思えないくらいだった。
そんなあいつは誰の自己紹介もまるで聞く素振りを見せず、ずっと俯いて
なにやら机の中を探っている。

おそらく、後ろの席の私だけに見えただろう。
机の中にはあいつそっくりの人形があった。

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