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昔の22

21の続きです




アスカがいなくなった。
昼になるまでは気付かなかった。
また部屋にこもって研究でもしているのかと思っていたのだ。
気付いたのは昼ご飯を作らせようとアスカを呼びに行った時だ。
ドアをノックしても返事が無いので開けてみると、中に誰もいなかった。
部屋は本やら研究道具やらで散らかったままだった。

どうしたのかと思ったけど、すぐに気がついた。
そういえば昨日、歯医者に行くとか言っていたのだった。
きっと予想以上に混んでいて、帰るのが遅くなってしまっているのだろう。
そう思うと、私は安心して、カップラーメンを作ることにした。

しかし、アスカは夜になっても帰ってこなかった。
ここにきてようやく、私は心配になってきた。
まさか、昨日のいなくなるとか言っていたのは、本気だったのだろうか、と。
それは困る。
食事はいつもアスカが作っているのだ。
このままでは夕飯もカップラーメンになってしまう。
どうしよう。

何か食べるものは無いかと、私は冷蔵庫を開けた。
がらんとした冷蔵庫の中に一つ、白い箱があった。
中に入っていたのは、小さなシュークリームだった。

私はそっと箱を閉め、冷蔵庫に戻した。

アスカが帰ってきたら、はんぶんこして一緒に食べよう。


結局夕飯もカップラーメンだった。
明日はちゃんと買い物して、料理しよう、と私は固く心に誓った。

朝になっても、アスカは帰ってきていなかった。
顔を洗い、服を着替え、さあ出かけようかと思った時、玄関のドアを誰かが叩いた。
もしかして・・・
淡い期待を抱きながら玄関へ急ぎ、ドアを開けた。

そこには誰もいなかった。
おかしいな、と思いふと足元を見ると、ぼろぼろになった黒猫が倒れていた。
赤い首輪をつけている。
私は猫を抱きあげ、家の中へ入れた。

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