情景を書き始めた頃
サッ、と風が二人の間を駆け抜けた。
ススキの穂が空に舞い、雪のように一面に降り注いだ。
舞は髪をそっと押さえながら、その様子を静かに眺めていた。
草原は暖かな夕日に照らされ、金色に輝いていた。
どこまでも続く黄金の海。
大きな黒いクジラが、その巨体をキラキラと光らせて、二人の真上をゆっくりと泳いでいった。
「またあした、この場所で。」
ザァッ、と強い風が二人の間を吹き抜けた。
たくさんのススキの穂が一斉に舞い上がり、吹雪のように舞の姿を隠した。
「待ってるわ。」
風が止み、穂がすっかり落ちた時、舞の姿はそこに無かった。
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