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昔の115

今まで気にしていなかったことが急に変に感じられることってありますよね




私の部屋って変だ。
私はずっと私の部屋にいる。
他に入ってくる人はいない。
この世界のこの空間には私以外の人がいない。
しかも今だけじゃなく、長い間だ。
すごく変だ。
こんな言葉ではこの変さは絶対伝わらないと思う。
昔の私が聞いても全然分からないだろう。
実際に感じないとわからない変さだ。

私の体も変だ。
私はずっと私の体と一緒に居た。
一秒も離れることは無かった。
私は常に空間の一部を占拠していた。
しかも一度もワープはしなかった。
私はずっと連続して、どこかに居た。
これもすごく変だ。

「分かる?この感じ」
「さっぱり分かんない」

「えっとつまりさあ、
私達ってびっくりする程不自由なんだよ」
「そういう話だったの」

「そうそう、だってさあ、
例えばスーパーへ行くとするでしょ?
そしたらまず部屋を出て、玄関を出て、
道路を歩いて、スーパーまで行かないといけないじゃん。
絶対こうしないといけないんだよ」
「当たり前だよねえ」

「私達は一秒で何が出来る?」
「何もできないよ」
「でしょ?でもそれが集まって一日になるんだよ
一秒が3600集まって一時間になるんだよ
変だと思わない?」
「3600秒もあれば色々出来るでしょ」
「3600秒じゃなくて、一秒が3600個だよ」
「一緒だよねえ」

私が変なのか。
私は何も持ってなくて私は自由だと思っていたのが間違いだったのか。
それもやっぱり不自然だ。

「変だよ 私が変ならどうして私が変だって分かるの」
「今の自分が昔の自分を間違ってたって思ってるんでしょ」
「なんで 全然分かってないよ わかったような口きいて」
「駄々っ子なんだよ」
「なんでこんな所にいるの 私がそうしたからか」
「誰がそうしたの」
「だから!つまり、要するに、私が変なのは違うんだよ」
「なにが違うの」
「私以外の人がみんな変なんだ」
「そうだよ、よく気付いたね」

私の友達は変だ。
同じ人とずっと一緒にいるなんて不自然極まりない。
もっと自由で賢いやり方がいくらでもあるはずだ。
やっぱり私が変なのかな。

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