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昔の104

ゲームのシナリオにするつもりでした




私は飛ばなければならない。
この地面から離れて、大気を自在に操り、
遠いところまで飛ばなければならない。

そう思っていたから、私はここでは空を飛べる。

「なんでわたしばっかり狙ってくんの!?」
『あはは、今までこき使われてた仕返しじゃないのー?』
「使ってやってたの!道具は使われてなんぼでしょ!」

私はパソコンに襲われていた。
得体の知れない光る物体をやたらに投げつけてくる。
私はそれをひたすら避けていた。

『がんばれー』
「お前も何かしろよ!」
『こうやって応援してるじゃーん』
「応援以外の何かをしろってことだよ!」

私は違和感を覚えていた。
あなたの様子がおかしい。
こんなに適当なやつじゃなかったはずだ。

「あ、止まった……」
『バッテリー切れかな?』

パソコンは動かなくなった。
近づいて観察してみる。やっぱり私のパソコンだ。
私の妄想の中なのだから当然といえば当然か。

『かっこよかったよーアリスちゃん。まるで映画みたいだった』
「あんたは本当に見てるだけだったんだね」
『だってわたしは何も出来ないしさ』
「なんか今日のあんた変じゃない?もっと真面目だったと思うんだけど」
『それはアリスちゃんが変わったから』
「ん?」
『わたしはアリスちゃんの理想なんだから、アリスちゃんが変われば私も変わるの』
「……ふーん」

気のない返事を装いながらも、私はひどく納得して動揺していた。
思い当たる節がありすぎるほどあったからだ。
確かに私は変わった。あなたも嫌いになった。
でもそのたびにあなたが変わっていくのだとしたら。
私は本当にあなたと別れられるだろうか。

「まあ前よりはマシになったんじゃない」
『えへへーありがとうアリスちゃん。わたしもアリスちゃん好きだよー』
「誰も好きとは言ってない」

ああ、気が狂う。
あなたは私なのだと、自分に言い聞かせる。

『それにしても、なんでパソコンが攻撃してきたのかなー?
ここはアリスちゃんの妄想の中なんだから、アリスちゃんに不利なことが
起こるわけないのに』
「……え?」
『アリスちゃんがここから出られなくなったことと、なにか関係があるのかな?』
「あんたそれ本気で言ってんの?」
『えっ!?』

驚いた。あなたならもうとっくに気付いていると思っていた。
私を妄想の世界に閉じ込めて得をする人なんて一人しかいない。
私の邪魔を出来る人なんて一人しかいない。
あなたなら気付いて当然だと思っていたのに。
それとも、これも私が望んだことだったのか。

「ま、気付いてないならそれでいいや。早く先に進もう。」
『えっ、ちょっとどういうことよー!教えてよー!』
「進めば分かることだよ」
『今教えて欲しいんだけど!』

これ以上会話の必要は無いと見て、私は先へ進んだ。
何処へ行けばいいのかは分からなかったけど、止まっているよりはいいだろう。
それに、このまま進んでもなんとかなるという妙な自信もあった。
だってここは私の世界なのだから。
どんな敵も所詮私自身なのだから。

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