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昔の100

アリスシリーズの始まり
しばらく続きます




みんな私だった。

お父さんも、お母さんも、友だちも、
先生も、隣の人も、
大統領も、先輩も、指名手配犯も、
優しい人も、意地悪な人も、
穏やかな人も、怒りっぽい人も、
聖人も、悪党も、

私が出会ってきたすべての人たちは、
私が過去にあり得た人たち、
私がこれからあり得る人たちだった。


私は何度も生まれ変わる。
そのたびに世界に人は増え続ける。
何度も何度も私はこの世界を繰り返す。
人は増え続ける。


気象が変わるように気性が変わる。
そこに私の存在は関係なく、
ただ雲が流れていくように立っている。
空が青から紫に変わるのを眺めている。

私にもできる事があるとするならば、それは
ただ一つ、生きるか死ぬかの選択に違いなかった。
ただそれだけが私に残された猶予だった。

奔放に移り変わる大気の流れを断ち切る。
全てを無かった事にして、空を黒で塗り潰す。
そうして一矢報いてやることもできるが、
そうしてしまった後にはもう
そうする意味も残っていないはずだった。


とはいえ、なんにせよ、私は生きている。
誰かになることも、何かをなすことも出来てないけど、
とりあえずは生きていた。
それだけで意味があると思いたかった。

そしてみんな生きている。
私がみんなであり得たようにみんなもまた私であり得たはずだ。
生きているだけで仲間なのだと、そう信じたかった。

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