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昔の95

天使になりたいね




長い長い夢を見ていた。
それが夢だと気付かない程に、長い夢を。
目覚めたとき、私はもう何も持っていなかった。
私は変われるだろうか。
私は誰かになれるだろうか。
誰かにとっての何か、
私にとっての誰かを、見つけることが出来るだろうか。

幻想の残滓が霧になり、視界を覆う。
私はこれを払わねばならない。
ずっと遠くを見据えなければならない。


いい話を一つ。


ある農村に一人の少女が居た。
彼女はいつも明るく、だれにでも優しかったので、
友達もたくさんいて、みんなその子のことが好きだった。
この子は天使だと言うものさえ居た。

天使でないことはその子がいちばんよく知っていた。
表向きは邪気の無いように振舞っていても、
彼女の心の中はいつも汚く、醜いものでいっぱいだった。

彼女はそう思っていた。

彼女は天使になりたかった。
どうしてもそうならねばならぬと感じた。
理由を考えることに意味はなかった。

彼女は悩んだ。
いくら上面を飾った所で、内面は全く変わらなかった。
自分の心は直視するに耐えなかった。

彼女は死んだ。
人々は彼女の遺した日記を読んだ。
結局彼女は天使だったのだ

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