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昔の149

静止した夜




夜空が張り付いたまま、動かない。
モニターが焼き付くように、
夜空も正常な機能を失い、色褪せていく。
端の方からじわじわと、白に染まっていく。
こうして時は止まったんだ。


私達は学校の校庭でそんな空を見ていた。
ある者は地べたに座って、
ある者は鉄棒にもたれて、
ある者はただ立って。
みんなばらばらに離れて、黙っていた。
誰も近寄ろうとはしなかった。
そうだ。きっとそうだろう。
私にはわかっていた。
私だってその一人なのだから。


みんな明日が来ないことを願っていたんだ。
ここにいるのはそういう人達なんだ。
だけどこうして、いざ本当に時が止まってみれば
どうしたらいいのかわからない。
不安になって、寂しくなって、誰かを求めて外に出て、
そしてここに集まってきた人達。
自分から何かするわけではないけど、
とりあえずここにいればなんとかなる気がする。
ここにいるのはそういう考えの人達。


全てが錆び付いていくようだ。
もう夜空の半分は白に埋め尽くされた。
星が遠く、遠くなる。
天球が高く、高くなる。
私の望みは一体何だったんだろう。
何にもなりたくはなかった。
ただ私でいられればよかった。
夜空は好きだった。
だけど、そんな夜空さえ、今目の前で褪せていく。
その後に残されるものは、きっとない。


朝、私は泣いていた。
どうしてだかひどく泣いていた。
レースのカーテンは楽しげに揺れて、眩しかった。

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