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昔の150

迷いの頃




間違ってるって分かってる。
どうすればいいのかも解ってる。
なのにどうにもできないのは、
まだ自分を信じ切れないせいだろうか。
それとも、間違ったままでもいいって思ってるんだろうか。
それとも、私は……



日が昇る前に、あの天文台に辿り着かなければ。
天文台で、私の生まれた星を見つけなければ。
私はもう忘れてしまう。
本当の故郷へは二度と戻れない。
私は本当の私を忘れてしまう。

だけど。
私は磨りガラス越しに丘を見上げる。
広い平野になったこの街に残るたった一つの丘。
地平線を遮るたった一つの起伏。
だけど磨りガラス越しではその境界も曖昧で、
あるのかないのかわからない。
私は動く気も起こらない。


ここには何も無い。
友達もいない。親もいない。
好きな人もいない。
嫌いなものもない。
私はここで、何も手に入れなかった。
だから、ここで私がいなくなれば、
私なんていなかったことになるだろう。
ここに私はいなかった。

本当の私を私は知っている。
故郷での私は、明るくて、友達思いで、
親孝行で、野心家で、純情で、幸福だった。
あの頃の私は確かに一片の穢れも無かった。
あれは確かに私だった。
だけど、だからって、
今の私が私じゃないなんて、どうして言えるだろう。



そんな夢物語を、今少し思い出したんです。

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