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昔の102

友達です




私は妄想の中で生きてきたつもりでした。
今ではハッキリとそれが間違いだったとわかります。
妄想は現実の間に差し挟まれるからこそ妄想だったのです。
妄想に呑み込まれた今、それは現実と変わりありませんでした。

現実逃避は完遂されてはいけなかったのです。
程々に現実と付き合い、関係を保っておく必要があったのです。

ここに閉じ込められた今、目に付くのは貧しい景色ばかりです。
こんなにもつまらない、味気ない世界だったとは知りませんでした。
虹色に輝いているように見えたのはそれを覆う膜のためだったのか。
中に入ってしまえば色褪せてしまって

友達もいました。
ねねねねねねねねねねねねねちゃんです。

長いから私はあなたちゃんと呼びます。
最初は律儀に名前で呼んでいました。
でも付き合いも長くなったのであなたちゃんと呼んでいます。

あなたは私でした。
あなただけではなく、この世界の人はみんな私でした。
私が作った世界なのだから当然なのですが、
そんなことにすら以前の私は気付いていませんでした。

小説家がたくさんのキャラクターを動かすように、
俳優がたくさんの役を演じるように、
私の中には私ではない誰かがいると思っていたのです。

でも、私の中はどこまでも私だけで、
私はどこまでも孤独でした。

それもそのはず、私は現実のあらゆる人を拒否してきたのです。
頑なに自分を守り、他人が入ってくることを許さなかったのです。
これは私が望んだ結果のはずでした。

「アリスちゃん、どうしたの?一緒に遊ぼうよ」
そう。あなたがそう言ってくることも、私はきっと知っていた。

「ごめん、あなたちゃん。私はずっと一人で、この世界で暮らしていけたら
どんなに幸せだろうってずっと思ってたけど、それは間違いだった。
私は元の世界へ帰らないといけない。」

あなたと私は鏡写しだ。

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