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昔の72

何が言いたかったのかもう分からないのも多いです




文化とは、無駄である。
文化とは、制限である。
文化とは、集団である。


「どーしてこんなことしなきゃいけないかなぁ……」
私はスコップを地面に差し込みながら言った。
「さあねえ、なんでかなぁ。」
黒髪ロングヘアーの彼女も土を山に乗せながら言う。

私たちは収穫祭の準備をしていた。
街の至る所に、深さ一メートルほどの穴を掘るのだ。
私たちのノルマは一人3つ。
二人とも、これが最後の穴だ。

「こんな町中に穴があったら、危なくて仕方ないよ。」
「そうだねえ、でもいいこともあるよ。」
「なに?」
「スリが逃げにくい」
「追いかける方も追いかけにくいじゃん……」
「敵から攻められにくい」
「だから味方も動きにくいでしょ!?」
「よーし、終わった!」

みなが穴から這い上がってくる。
お洒落なドレスがドロドロだが、本人は気にしていないようだ。

「えーもう終わったの?
 私まだ30センチぐらいなんだけど。
 ちょっと手伝ってよ。」
「やーだよ。自分のノルマは自分でやりなさい。
 じゃ私、牛乳とってくるから。」

そう言い残し、彼女はさっさと家へ戻ってしまった。
友達がいのない奴だけど、あいつは昔からあんな感じだ。
いまさら怒る気にもなれない。

ひたすら穴を掘る。
10月の日差しはまだ熱い。
ときどき吹く爽やかな風に汗を乾かしながら、私は無心に体を動かした。
穴を掘ると言うのは、全身を使う過酷な肉体労働である。

「よー、がんばってるねー。」

みなが帰ってきた。
右手には一本の牛乳パック。

「ちょっと飲ませてくんない?」
「何言ってんの、ダメに決まってんでしょー。」

みなは牛乳パックの口を開け、自分の掘った穴に中身を注ぎ入れた。

「うあーらーもったいなーい……」
「もったいなくないよ、こういう儀式なんだから。」
「こんな儀式に何の意味があるっていうんだー」
「もう、ほーら!」

みなはポケットから何かを取り出すと、私の方へ放り投げた。

「うわわっ」

慌ててスコップを捨て両手でつかんだ。
それは小さな缶ジュースだった。4つ星サイダーだ。

「冷蔵庫から出したばっかだから、まだ冷たいと思うよ。」
「うおー、さすがみなちゃん、分かってる―!」
「伊達に6年あんたといるわけじゃないからね。」
「じゃあご厚意に甘えて、いただきまーす!」
「150円ね。」
「金とんのかよ!…って、うわああああっ!」

プシャッ!!

……っと爽快な忌々しい音を立て、

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