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昔の103

キレ気味のアリスです




あなたは私であり私でない。
私の嫌な所、駄目なところを全て反転した、理想の私。
それがあなただった。

あなたは私の最良の友であり、最愛の恋人であり、最高の師であった。
そのはずだった。
そう作ったはずだった。

「えっ、帰っちゃうの?残念。もっと遊びたかったのに。」
「私と遊んでたって楽しくないでしょ……」
「そんなこと無いよーすごく楽しいよ」
「じゃあどんなとこが楽しいか言ってみなさいよ」
「……」

でも、長く付き合うほどにあなたの態度は鼻につくようになってきた。
あなたが変わったわけではなく、最初からあなたはそうだったのだ。
少し突っ込んだ質問をすると会話は続かなくなる。
それはあなたが嘘を言っているからだ。
あなたはただの偽善者だった。

「まあでも、アリスちゃんが帰りたいって言うなら仕方ないね。
一緒に帰ろう。」
「ほんとはせいせいしてるくせに」
「そんなこと無いってばわたしはほんとに……」
「もういいよあんたが何言ったって私は信用してないから」
「……」

あなたも私だ。
結局私が変わらなければいけないのだ。
もうこんな妄想の世界は捨てて、早く現実へ帰らないといけない。
あなたとも早く別れないといけない。

「で、どうやったら帰れるわけ?」
「わかんない……いつもアリスちゃんはどうやって帰ってたの?」
「帰るも何も妄想なんか自分の意志ですぐやめられてたんだけど」
「そっか。じゃあ今はいつもと何かが違うんだね。何が違うんだろう。」
「さあ。とりあえず歩いてみるか」
「あっ、ちょっと待ってよ!」

これもつまりは一人芝居なわけで、虚しいと言う他ない。
それでも答えてしまうのはなぜなのか。
昔はあなたとも仲の良い頃があったのだ。
その頃からの惰性なのかもしれない。
後ろを見ずに私は歩き続けた。

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