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昔の20

病気になるとナーバスになるアスカ
キノは割と平気




メーデーメーデー…
今日はメーデー。

朝十時。
アスカはまだ起きてこない。

アスカは基本的に早寝早起きだ。
こんな時間まで寝てることは滅多にない。

やっぱり今年もあれか、と思いつつ、
私はおかゆを作って、アスカの部屋へ持って行ってやる。

ノックをして、ドアを開ける。
アスカはまだベットの中にいる。

「げほっ、ごほっ…ヴー…ヴー……」
「大丈夫?ほら、おかゆ作ってきてあげたよ。」

私が話しかけても、アスカは返事をしない。
熱っぽい顔でぼーっと虚空をみつめている。

「その様子だと、今回は相当ひどいみたいだな。」
「アー…ヴー……」

下手すると死んじゃいそうだ。
五月病こじらせて死ぬなんてやめてほしい。

「キ…ノ……ごほっ」
「あ?何?」

顔を歪ませて、とても苦しそうに話すアスカ。
痛みはあるんだろうか。

「出てって…一人になりたい……」
「…そう。分かった。」

おかゆをベットの横に置き、私は部屋を出る。
放っておけばそのうち治るだろう、なんて甘い期待を抱きながら。

いや、甘い期待なんかじゃない。
今までも、それですぐ治ってきたじゃないか。

たかが五月病じゃん。
そんなに心配してやらなくても……



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キノはあたしを心配してくれてる。
どんな時もあなたはあたしの味方でいてくれた。

あたしは何もできないのに。
あなたはずっとあたしのそばにいてくれた。

なのに、あたしは今日、あなたを裏切ります。

キノはこんなこと、望んではいないでしょう。
でも、無理なんです。

ほんとうにありがとう。
そして、ごめんなさい。



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キノが持ってきてくれたお粥を見つめる。
溢れそうになる涙をぐっとこらえる。

窓を開ける。
鼓動が速くなる。

窓の淵に手をかけ、顔を外へ出す。
____さよなら______________________


「アスカ!!!何やってんだ!!!」
「キノ…ごめんね……」


あたしはそっと手を傾け___そして___________
おかゆは庭に落ちた。











結局、アスカの五月病は一日で治った。
まあ、思っていた通りだ。

「…で、私がせっかく作ってやったお粥を、なんで捨てちゃったわけ?」
「えーだってさー食べられるような気分じゃなかったしー。後キノのお粥ってべちゃべちゃしてて美味しくないし。」
「だったら残しゃいいのに。」
「せっかく作ってくれたのに残したら悪いと思ったんじゃない?まあ分からないでもないよね。」

人ごとだなぁ。
実際五月病にかかってる間は人が変わるらしいけど。

「お粥作っただけじゃないんだよ?昨日は家事も何も全部私がやったんだから。ちょっとは感謝してよ?」
「うわっ、恩着せがましぃ!あたしは病気だったんだから当り前でしょ?もーこれだからキノは…」

あれ、なんでこっちが説教受けてるんだろう。
ったく、さすがの私も怒るぞ。

私は手の中のメモを見た。
アスカの部屋の中にあったものだ。

・・・ま、いっか。

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