勿忘草のふるさと
この世界は、残酷でも優しくもなくて、 | 桜の花びらが次々に地面へと惹かれていく。
冷たくも暖かくも、奇妙でも自然でもなくて、 | 落ちたいと願ったから、花びらは育った枝を離れていく。
ただ透明にそこにあるだけだった。 | 法則も運命も因果もこの世界には存在しない。
それに色を付けたのは、人間だった。 | それは人間の勝手な想像の産物だ。
私達だった。 | 全てを動かすのは、留めるのは、奔放な思念の力だ。
|
抽象化の波が私を蝕んでいく。 | 身体を失い、居場所を失くした思念が漂っている。
私ももうすぐに色を失ってしまう。 | ぼろぼろと、具体性を剥がれ落としながら。
私がまだかろうじて私を認識できる間に、 | 自分であった証を洗い流しながら。
私がぎりぎり私でいられる間に、 | また、新しい存在に生まれ変わることを夢見て。
大事なものを取り戻さないと。 | 少しでもあの光に近づこうと昇っていく。
全てが意味を失っていく。 | あの果てしない青に近づこうと。
空が無数のブロックに分割される。 | そんなキラキラしたあなた達を見ていると、
バラバラに別れていく。 | 我々のやっていることなんて無駄なことに思える。
崩れ落ちた碧の後ろに覗くのは永遠の空間だ。 | そう、ただ寂しいだけなんだ。
色付けを失った本来の在り方だ。 | 名前もない誰かの夢が身体に溶けた。
|
お母さん。 | どうしてだろう。
お母さん、大好きだよ。 | あの思念は、さっきからずっと我々の後ろを付いて来る。
はじめからずっとそばに居てくれたお母さん。 | 偶然だろうか、それとも何か目的があるのだろうか。
世界の温もりを最初に教えてくれたお母さん。 | そんなことありえない。
私に生きていく力をくれたお母さん。 | だってあの思念は、もうあんなに透き通っている。
私の全部の根っこにいるお母さん。 | もうほとんど空っぽで、何も残っていない。
家族が、先生が、友達が、仲間が、敵が、恋人が、 | あんな状態でまだ何かの目的の為に動けるなんて、
どんどん私にできていったよ。 | まだ何かを願うことができるなんて、ありえない。
たくさんの景色が見れたよ。 | それに、あれは、ああ、あれは、
お母さん。 | 勝手な色を世界に付けながら生きていた、
いま帰るからね。 | あの人間じゃないか。
|
事物は境界を超えて混ざり合っていく。 | 絢爛に、盛大に、大仰に、
たった一色になってしまったこの世界の色は | ばら撒いた存在の欠片を撃ち抜いていく。
何と言っただろう。 | あっという間に勿忘草の群がまた一つ増えた。
口を開いても言葉は紡げない。 | 山奥にぽっかり空いた日当たりの良い広場。
みんなとっくに逃げてしまった。 | こんなところまで付いて来たあの思念は、
透明な私は流れて行く。 | こちらに見向きもせず一輪の花の前で跳ねている。
|
最初に見たのは何だっただろう。 | 彼女には何が見えているのだろう。
それが全ての間違いの始まりで、 | 我々に見えるのは、ただありのままの世界。
大事な大事な私の勘違いの始まりだ。 | 奔放な意志に溢れた、予測が意味を持たない世界。
ほんの小さな、一瞬だけ煌めく光の種。 | それが全てで、それだけが正しいのに。
私はそれを抱いて眠ろう。 | 彼女はわざわざ、それを捨てに来たのだ。
|
抽象化の波が貴方を蝕んでいく。 | 一輪の勿忘草が広場から消えた。
この世界は、残酷でも優しくもなくて、 | 桜の花びらが次々に地面へと惹かれていく。
冷たくも暖かくも、奇妙でも自然でもなくて、 | 落ちたいと願ったから、花びらは育った枝を離れていく。
ただ透明にそこにあるだけだった。 | 法則も運命も因果もこの世界には存在しない。
それに色を付けたのは、人間だった。 | それは人間の勝手な想像の産物だ。
私達だった。 | 全てを動かすのは、留めるのは、奔放な思念の力だ。
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抽象化の波が私を蝕んでいく。 | 身体を失い、居場所を失くした思念が漂っている。
私ももうすぐに色を失ってしまう。 | ぼろぼろと、具体性を剥がれ落としながら。
私がまだかろうじて私を認識できる間に、 | 自分であった証を洗い流しながら。
私がぎりぎり私でいられる間に、 | また、新しい存在に生まれ変わることを夢見て。
大事なものを取り戻さないと。 | 少しでもあの光に近づこうと昇っていく。
全てが意味を失っていく。 | あの果てしない青に近づこうと。
空が無数のブロックに分割される。 | そんなキラキラしたあなた達を見ていると、
バラバラに別れていく。 | 我々のやっていることなんて無駄なことに思える。
崩れ落ちた碧の後ろに覗くのは永遠の空間だ。 | そう、ただ寂しいだけなんだ。
色付けを失った本来の在り方だ。 | 名前もない誰かの夢が身体に溶けた。
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お母さん。 | どうしてだろう。
お母さん、大好きだよ。 | あの思念は、さっきからずっと我々の後ろを付いて来る。
はじめからずっとそばに居てくれたお母さん。 | 偶然だろうか、それとも何か目的があるのだろうか。
世界の温もりを最初に教えてくれたお母さん。 | そんなことありえない。
私に生きていく力をくれたお母さん。 | だってあの思念は、もうあんなに透き通っている。
私の全部の根っこにいるお母さん。 | もうほとんど空っぽで、何も残っていない。
家族が、先生が、友達が、仲間が、敵が、恋人が、 | あんな状態でまだ何かの目的の為に動けるなんて、
どんどん私にできていったよ。 | まだ何かを願うことができるなんて、ありえない。
たくさんの景色が見れたよ。 | それに、あれは、ああ、あれは、
お母さん。 | 勝手な色を世界に付けながら生きていた、
いま帰るからね。 | あの人間じゃないか。
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事物は境界を超えて混ざり合っていく。 | 絢爛に、盛大に、大仰に、
たった一色になってしまったこの世界の色は | ばら撒いた存在の欠片を撃ち抜いていく。
何と言っただろう。 | あっという間に勿忘草の群がまた一つ増えた。
口を開いても言葉は紡げない。 | 山奥にぽっかり空いた日当たりの良い広場。
みんなとっくに逃げてしまった。 | こんなところまで付いて来たあの思念は、
透明な私は流れて行く。 | こちらに見向きもせず一輪の花の前で跳ねている。
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最初に見たのは何だっただろう。 | 彼女には何が見えているのだろう。
それが全ての間違いの始まりで、 | 我々に見えるのは、ただありのままの世界。
大事な大事な私の勘違いの始まりだ。 | 奔放な意志に溢れた、予測が意味を持たない世界。
ほんの小さな、一瞬だけ煌めく光の種。 | それが全てで、それだけが正しいのに。
私はそれを抱いて眠ろう。 | 彼女はわざわざ、それを捨てに来たのだ。
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抽象化の波が貴方を蝕んでいく。 | 一輪の勿忘草が広場から消えた。
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