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昔の93

92の続き




逆さになったままで話を聞いている。
話しかけてきたのは小さな光の矢だった。
ここにはなにもない。
まだ鍋は来ない。
二人から四人へ、五人から六人へと増えていった。
これは栄光ではなく、契だった。
絡繰りの解けたゼンマイ時計のように、床に転がる。
ひどく鈍い音がした。

300sec.
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それが誰であろうと、思慮する必要はなかった。
まだここにいるならば、資格は十分にあるはずだった。
海だ。潮の匂いが水面をなぞってやってくる。
砂の感触を素足で確かめながら、高く手を伸ばした。
きっと誰かが見つけてくれる。
一つレモンを投げ飛ばして、内側から広げる。
爽やかな香りと刺激的な霧が辺りを覆う。
短い夏への手向けは、これで十分だろう。

300sec.
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およそ有り得べき全ての可能性が、私には見えていた。
ある道は細く長く、またある道は大きく暗く、ある道は途中でその姿を変えていた。
縦横へと放射状に広がる無尽の途。
そのどれを選べばよいのか、それは分からなかった。

これは嘗て在り得た一つの道。


まだ言葉も充分に知らなかった幼い頃、私は両親に連れられて遊園地へ遊びに行った。
私は観覧車が大のお気に入りで、そればかり何度も乗っていた。
街が、人が、山が、どんどん小さくなっていって雲へ近づく。
私の知らないことが全てここにあるんだと思って、私は大いに興奮した。
やがて前も後ろも何も見えなくなって、そしてまた地上が近づく。
ああ、帰ってきたんだと安堵する。
そしてまた混沌の日々が始まるのだ。
この道はまだ続いている。

600sec.
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魔法が使えるなら、まずはこの橋を爆破しよう。
船も全部壊してしまおう。
電波もみんな遮断しよう。
あの男がここへ来たら、二人で窓の外へ突き落とそう。
短い間だったけどお世話になりましたって言いながらグーで殴ろう。
嵐が来たら外で。
陽が照るなら夜に。
違いはそう多くない。
そこに華を。

300sec.
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これは相当な重症だと言う他無かった。
考えながら物を言うということが出来ない。
考えながら話を聞くということも出来ない。
こうしている間にも拳は緩み、風船は手を離れて空へと飛んでいく。
間違っているのかどうかすらわからない。
鳩が滑空して手の中へ収まる。
力の加減ができず、私は鳩を握りつぶしてしまう。
脈絡もなく矢が私のふくらはぎに刺さる。
動脈のうねりが聞こえる。
部屋にいるのは自分だけで、だからこれを刺したのも自分でしか有り得なかった。
誰かが殺してくれたなら良かっただろう。
庭先にある鈴蘭の実が鳴った。
それが合図となって、私に向かって一斉に矢が飛んでくる。
そのまま眠っていたかった。

600sec.
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とにかく、俺は説教なんてガラじゃないからさ、
まあひとつの考え方ってことで聞いて欲しいんだけど、
アイツに固執することは無いんじゃないか。
自分を偽る奴に碌な奴は居ないってのが俺の持論でね、それがどんな形であろうとさ。
何かのために誰かのためになんてのは通過点にすぎないんだよ。
そこに住む輩も居ないわけじゃないが……

420sec.
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さあ吹きとばそう。
街に行って肩の隣に花を生けよう。
用がすんだらビルの屋上でシャンパンを飲んで行こう。
時々まだ灯りが見える時があるんだ。
夜から見えるときもあるし、明るい時から見えることもある。
街が花でいっぱいになるまでやろう。
卵を買いに工場へ行こう。
産みたての卵を作るところを見て帰ろう。
夕飯は焼きそばとショートケーキのミックスジュースにしよう。
パンダも入れよう。
寝顔を見ながら空へ帰ろう。
波に溶けて空へ帰ろう。

300sec.
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というわけで、まあ意味なんて無かったのですが。
あるいは元々頭の中にあったものを映し出しているだけかもしれません。
やたらと目立つのが気障な書き方ではないでしょうか。いちいち鼻につきます。
脈絡のない、物語性もない話に価値はあるのでしょうか。
なんとなく、薄ぼんやりとその輪郭を見せるような手法は狙っているわけではなく、
細部まで書き込むことが出来ない、書き込める自信がない事によるものなのです。
ただ徒に言葉を繋ぎあわせ、その解釈は貴方に丸投げします。
どうか貴方の手で

300sec.

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